検査依頼に関するQ&A

検体が溶血していても検査できますか?

血清中のIgEレベルは溶血とは関係なく測定可能です。
ただし、全血の場合は遠心分離して赤血球を取り除いてください。

乳び検体でも検査できますか?

血清中のIgEレベルは脂肪血症とは関係なく測定可能です。

検査を行うにあたって,ステロイドの休薬は必要ですか?

コルチコステロイドの投与によって検査結果への影響を主張する説もありますが、
実際には全身の免疫抑制が起こっていない限り、循環血中のIgEには影響がありません。
一般的に、コルチコステロイドの治療上の通常薬用量(0.5mg/kg)以下ではほとんど免疫抑制は起こりませんので、ステロイドの休薬期間は必要ありません。

検査を行うにあたって,オクラシチニブマレイン酸やロキベトマブの休薬は必要ですか?

検査に影響はございませんので、投薬中でも測定可能です。

常温で大丈夫ですか?(冷蔵保存でなくても大丈夫なのですか?)

検体の送付は常温でお願いしています。
IgE分子のアレルゲンと結合する部位は大変熱に強く、冷蔵や冷凍をしなくても壊れません。
このことは、長い実績といくつもの研究結果によって実証されています。

植物の花粉に陽性結果が出た場合は,その花粉が飛散している時期だけ気をつければ良いのでしょうか?

新聞などに掲載される花粉情報だけを材料に、動物にとっての花粉症の時期を判断することはできません。花粉の観測地点は概ね高所、あるいは建物の屋上などに設置されています。湿度の高い日に湿気を吸着し重量を増した花粉は地面に落下し、計測の数値に反映されず、実際より低い観測量として公表されてしまうケースがあるからです。散歩時に草むらを歩く動物の鼻は地面に接近しますので、落下した花粉にも容易に感作され症状が現れることがあります。

PAX検査結果の学術質問と専門家の回答

以前のSPOT TESTと比較して違いはありますか?

 PAX は、十分に特徴付けられた単一の抗 IgE モノクローナル抗体を使用してペットの IgE を検出し、検出レベルを保証します。PAX は、交差反応性炭水化物決定基 (CCD) をブロックするテクノロジーも使用しています。 場合によっては、CCD が IgE 受容体に結合し、偽陽性が発生することがあります。PAX テクノロジーは、ブロッキング剤 (CCD ブロッカー ) を使用してこの結合を防ぎます。 CCD ブロッカーを使用しないアレルギー検査では、多数のアレルゲンが特定されますが、その多くは無関係です。 この技術により、混乱を防ぐために適切なアレルゲンのみが特定されます。
 PAXは最先端であり、SPOT TESTより精度の点で上回っています。
From Dr. Thierry Olivry

PAXの検査精度、感度・特異度について教えていただけますか?

抽出物をベースにした検査(皮内反応または血清学的検査)とPAXのように多くの項目で分子アレルゲンを用いる検査とは根本的な違いがあります。実際、抽出物を標準化することはほとんど不可能です。そして異なる検査会社の抽出物による違いが報告されています。それ以外にも同じ会社の製造ロットごとに異なることも分かっています。
さらに、抽出物には非常に少量の関連するアレルゲンが含まれていることがあります。例えば、チリダニであるコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)はゲノムの中に1万を超えるたんぱく質をコードしている遺伝子がありますが、ヒトがDer f をアレルゲンとして認識する部分は、公式に認知されているものでわずかに40、イヌでは5だけです。つまり、Der fの抽出物に含まれているほとんどのたんぱくはアレルゲンの感作の検査とは関係がないものです。
実際、比較的最近の研究(Moya, Vet Immunol 2016)では、標準化されたDer fの抽出物ではDer f1、Der f 2、Der f 15、そしてDer f 18はそれぞれわずか2%しか含まれていないことが示されています。
これに対して、PAXはこれら4種類のたんぱく質が100%含まれています。こうした理由から、こういった検査はIgEの感作に対して、特にIgEが少ない場合において、本質的に高い感度を持っています。
PAXで使用されているすべての抗原は生物学的活性が標準化されていることも付け加えたいと思います。そして品質管理は人の検査と同様です。
IgE検査の感度と特異度を決めるにあたって、患者がどのアレルゲンに対して本当に感作されているかを正確に知らなければなりません。イヌにおいては、実験的に感作させるか、あるいはbeeやwaspといったハチ目に刺された事例のように、特徴的なアレルギーによる炎症が見られた場合のみ分かります。Der fに感作されていない21頭の実験ビーグルではDer fアレルゲン特異的IgEは検出できませんでした。一方で、感作させた5頭中4頭からDer fアレルゲン特異的IgEを検出しました。
ハチ(訳註. 原文ではbee と waspに分けています)に刺された後にアナフィラキシーが見られた飼い犬に対して行われた私たちの調査で、25頭中24頭から毒抗原に対するIgEを見つけました。これに対して、室内で生活している実験ビーグル21頭ではこうしたIgEは見られませんでした。
上に挙げた事例を併せて考えると、PAXの感度と特異度は、PAXが27頭中2頭以外は適切に感作されている状態を検出できており、一方で関連するIgEはコントロール状態にある21頭の通常の犬では見つからなかったので、素晴らしいと考えられます。
From Dr. Thierry Olivry

SPOT TESTよりもPAXの方が陰性となりやすいですか?

重要な点は、PAXでは、擬陽性を生じさせるcarbohydratesをより適切にブロックすること(CCDブロッキング)で陽性数が減っているということです。IgEが花粉や昆虫などの複数のアレルゲンにあるcarbohydratesに結合することの重要性は獣医学の専門家がごく最近になって発見したものです。このブロック方法はSPOT TESTでは用いられていなかったため、これが原因の一つとなってSPOT TESTではより多くの陽性反応が出ていました。
From Dr. Valerie Fadok

6カ月齢の犬にアレルギーの検査はできますか?

1歳齢未満の場合は免疫状態が十分に確立できていないことが多いので、アレルギーを発症する可能性は低いと思われます。
From Dr. Thierry Olivry

食物抗原が全て陰性という事は食物アレルギーではないという事ですか?

食物に対して陽性反応がなかったとしても、残念ながら食物アレルギーを除外することはできません。PAX結果が陽性であれば犬が食物の物質に対してIgEを作り出しているということですので、その食事を避け、その後に刺激を与えると反応するかどうかを見る負荷試験を行います。しかしアレルギーが疑われる症状がある場合でPAX結果が陰性であれば、その犬は抗体が介在する反応より細胞性免疫の反応する状態であることを示唆しています。私は以下の表を使うことで説明するようにしています。そのため、食物に対して陽性反応がなかった結果から考えると食物に対する高いレベルのIgEはないと先生にお伝えできます。理想を申し上げますと、食事トライアル:食物除去試験を8週間行い、反応をみて食物負荷試験で犬が食物に反応するかどうかを見てみるとよいでしょう。



From Dr. Valerie Fadok

JAK-1阻害薬(アポキル)の投与は検査結果に影響しますか?

ゾエティス社はアポキルを2週間投与した数頭の犬の血清を使って検査を行いました。
血清学的アレルギー検査および皮内反応に対する影響は見られませんでした。
他の独立した研究でもアポキルを1か月使用した犬にアレルギー検査を行っても影響が見られなかったことが分かりました。
長期使用した場合の公開されている研究はありませんが、アポキルを1年以上使用した犬でも血清学的および皮内反応によるアレルギー検査で陽性反応が出た経験があります。
そのため、陰性の結果が出たとしてもアポキルによるものではないと考えます。
From Dr. Valerie Fadok

検査される種類によって、ExtractとComponentが両方検査されるもの、Componentのみが検査されているものがあるのはなぜですか?

ExtractはComponentと比べて再現性が低いため、特定のExtractに対して十分に分かっているComponentがない場合にのみExtractを使用します。
一方で、Componentが十分に分かっている場合はExtractを検査する必要がありません。例えば温帯気候に見られる草のなかで最も重要なギョウギシバ(Phleum)では、ComponentとしてのPhl pがギョウギシバの全ての重要なアレルギーの原因をカバーしています。
これらの理由から、十分に分かっているComponentsがある場合にはExtractを除外しています。
From Dr. Thierry Olivry

専門医のご紹介

Dr. Thierry Olivry(ノースカロライナ州州立大学名誉教授)
Dr. Valerie Fadok(1982年にアメリカ獣医皮膚科専門医を取得)

その他にもご質問がございましたら,お気軽にご連絡ください。